Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

路面電車をキーにしたツンデレ恋物語落語

29.都電物語(古今亭駒治) かつて東京の中央でも路面電車(都電)が走っていた。その事実をもとに作られているが、実は主役は毎朝駆け込みで乗車するOLと運転手で、都電は要所要所で2人の関係を進める役回りをしている。噺の中でこのOLは都電の運転の仕方に一家…

前振りなしで気楽に楽しめる、新作落語のお手本

28.ぐつぐつ(柳家小ゑん) あらすじがかなり知られている古典落語と異なり、新作・創作落語はほぼ初見の客を相手にしなければならない。よって、どれだけ客に違和感を感じさせることなく噺に引き込めるかが重要なポイントになる。 この噺は、屋台のおでんたち…

先生と生徒の校内攻防を描いた傑作落語

27.仁義なき校争(桂三枝/現・桂文枝) 先生と生徒という関係は落語にしやすいのかもしれない。この噺でも、ある学校で生徒の反抗・授業妨害に悩まされる先生たちが一念発起しヤクザ風に振る舞って威圧しようとする様が描かれているが、多分制作時の関係で学校…

まさかの金庫を主役にした人情泥棒噺

26.明日に向かって開け(三遊亭白鳥) 落語の中ではいろいろなものが擬人化されるが、多分金庫は初めてではないだろうか? ストーリーは銀行に忍び込んだ泥棒が、かつて世話人として雇われていた老人を使って金庫開けようとするが…というもの。泥棒と老人の立場…

猫好きが作った猫好きのための落語

25.バイオレンス・スコ(春風亭百栄) 趣味から新作・創作落語を作る噺家は多いが、この噺もその一つ。ストーリーは野良猫なのに何故かスコティッシュ・フォールドとアメリカン・カールとで縄張りが分かれてる地域で餌場のエサを巡って諍いが起こるが…というも…

謙虚なおっさんの頑張る姿を描いた落語

24.ピッカピカの一年生(桂三枝/現・桂文枝) いくつになっても勉強はできるというが、向学心を持ち、さらに学校に行ってまで学ぼうとする人は少ない。ストーリーは、中卒の町工場経営のおっさんが高卒になりたいと息子も通う高校に入学し、周囲の目がある中で…

買い物につきものの煩わしさを見事に言語化した落語

23.買い物ぶぎ(立川志の輔) 買い物の仕方は人それぞれだが、スーパーやドラッグストアで誰もが一度はどれを買うべきか分からなくて悩む、という経験をしているはずだ。 この落語でも奥さんの代わりに風邪薬その他を買いに来た男が、商品の多さに困って店員を…

特定日イベントの落語化を見事にクリアした好作

22.白日の約束(柳家喬太郎) 落語に特定の日のイベントはなかなか盛り込みにくい。例えば古典落語の掛取漫才や初天神がそうだが、師走や正月のイベントを題材にしているせいで時節を外して演じにくくなっている。 この噺はホワイトデーを絡めているが、イベン…

登山落語の先駆け作品!

21.遥かなるたぬきうどん(三遊亭円丈) ストーリーは冬のマッターホルンに登った客のために蕎麦屋の店主が山頂までたぬきうどんを出前に行く、というだけなのだが扇子をハーケン代わりにして登る仕草が目新しい。ほぼ店主の独白で進められるが、登山をしてい…

古典落語の続きを落語にした傑作

20.本当に怖い愛宕山(春風亭昇太) 古典落語の続きを考えるという企画から発案された噺だが、まず『愛宕山』を選んだところがセンスがある。 『愛宕山』のラストでせっかく拾い集めた小判を崖下に置いてきた幇間の一八が再度拾いに降りるが、崖上の若旦那は綱…

三題噺から生まれたスーパー新作落語

19.豆腐屋ジョニー(三遊亭白鳥) 落語には三題噺という即興で三つ客からお題をもらって噺を作るという遊びがある。といっても、相当力量がないとムリなので誰でもできるわけではない。この噺のお題は二股・豆腐・公家だったがこれらをスーパーを舞台にした落…

ある意味時代を先取りしてしまったタクシー落語

18.真心サービスおじんタクシー(桂三枝/現・桂文枝) 三枝はタクシーによく乗るせいか、創作落語にもしばしば題材にしている。ストーリーは高齢化社会に伴いおじんばかりを運転手にしたタクシー会社、だがドライバー達は浪曲を唸ったり女性客に説教したりと毎…

割と珍しい新作怪談落語の好作

17.マサコ(春風亭昇太) ストーリーは、怖がりの若者が怪談話の名手である友人のように上手に怪談を語ってみたい!とはりきるが…という簡単なものだが会話が若者らしくてどんどん引き込まれる。 夏は怪談話が寄席で多くかけられるが新作・創作落語の怪談話は…

居場所のないおじさんの為の優しい落語

16.老楽風呂(桂文珍) 落語はもともとアホな人々を笑いながら受け入れる、といった面がある。この噺も会社にも多分家庭にも居場所がないおじさんを笑いつつ優しい目を向けていて、とても好感がもてる創作落語になっている。 パソコンも満足に使えず会社で仕事…

落語世界をパロディ化した面白落語

15.落語の大学(柳家喬太郎) この落語は様々な古典落語の設定を取り入れて構成されてるため、聴く側にも若干古典落語の知識が必要になる。が、知識なしでも笑えるように工夫しているところはさすがだ。 落語大学に第一志望を落ちて仕方なく入学した学生が、先…

身近な疑念を落語にした傑作落語

14.ガラガラ(立川志の輔) 志の輔の新作落語は誰もが''ホントかな?"と疑っている身近な物事を上手く料理していることが多い。この落語でも、福引のガラガラには本当にアタリを入れてるのか?という小さな疑念をベースにし、成功している。 寂れた商店街のセー…

ヤクザと塾の異色組み合わせが成功した爆笑落語

13.くもんもん式学習塾(桂三枝/現・桂文枝) ストーリーは資金繰りに困ったヤクザの組長が組員を講師に仕立てて学習塾を開き、生徒をスパルタで教えたら、怯えた生徒が恐怖心のあまり猛勉強した為成績はうなぎ登りで大評判になるというもの。 ''教える”という…

自伝も落語になるとこんなに面白い!

12.中沢家の人々(三遊亭圓歌) この噺は2017年に亡くなった三遊亭圓歌の十八番。どもりの高校生が駅員から落語家になり、何故か自分の親だけでなく嫁両親も引き取って暮らす日常をコミカルに語り、笑いをとっていた。 自分のことを語るのはマクラで噺家がよく…

熱血教師の部活指導が落語になると⁈

11.熱血怪談部(林家彦いち) 体育教師のモノマネ(?)が似合う落語家林家彦いちが作った落語なので、聴いていると学校にいるような臨場感が味わえる。 怪談部というちょっと変わった部活をする生徒たちを熱血指導する先生。その夜、学校見回り中の先生の前に生…

下戸の哀愁漂う飲み会落語の決定版

10.宴会の花道(春風亭昇太) アルハラという言葉も広まった令和ではそうでもないかもしれないが、以前は会社員の飲み会と酒はセットだった。飲み放題でウーロン茶しか選べない下戸にとってはたまったものではないが、ではもし下戸派の主張が通った飲み会にな…

鉄道ファン必見の擬人化落語

9.鉄道戦国絵巻(古今亭駒治) ストーリーは、JRと東急線が覇権を巡ってバトル!それに他の私鉄も参戦して…というだけなのだが、各線の特徴をうまく捉えているせいで、鉄道にそんなに詳しくなくても笑える噺になってるのがスゴイ。ゲームやアニメのおかげで、…

ファックス送信間違いが引き起こす悲喜劇

8.踊るファックス(立川志の輔) 薬局でセール用チラシについて悩み中の店主家族に、これから自殺するという女性からの間違いファックスが届く。最初は親切に対応してたものの、売り言葉に買い言葉で双方ヒートアップ!挙句に他の人にまで間違いファックスを送…

カラオケが落語になるとこんなに面白い!

7.カラオケ病院(春風亭柳昇) 2021年3月はコロナウィルスのため緊急事態宣言中だが、もし感染した時こんな病院にかかれたら嬉しいのに…と思わせる落語。 ストーリーは、流行らない病院が集客のため患者のカラオケ大会を開き、参加者は自分の病気にちなんだ替…

異世界と落語コラボの成功例

6.つばさ(林家彦いち) 観た時にその斬新さにびっくりした後大笑いした。系統で言うと、古典の『蒟蒻問答』に似てるが、こちらの方が断然痛快! ストーリーは、日本とちょっとだけ違う異世界で落語家をやっていた若者が、ひょんな事からこちら側の世界に来て…

ゲーム✖️落語の面白さを証明した秀作

5.地下鉄親子(三遊亭白鳥) RPGと落語の組み合わせがうまく行くと、これほどまでに面白いのか!と驚かせてくれる落語。 いじめられっ子で母子家庭の少年に工事現場で働いている母親がドラクエをプレゼントする(けど自分がまずプレイしてしまい面白さにハマる…

''その道のプロ”の可笑しさを笑いにした落語

4.寿司屋水滸伝(柳家喬太郎) フランス料理の修行しかしてこなかった息子が亡き父の寿司屋を継いだが、どんどん板前が辞めていく。仕方なく自分で握ろうとするが刺身も造れずチャーハンを寿司飯にする有様。怒り出した客にたまたま店にいた"トロ専門”の板前が…

被害者と加害者の鮮やかな逆転が素晴らしい落語

3.みどりの窓口(立川志の輔) JRの切符購入したことがない人はいないと思うが、オンライン販売普及前は窓口に長蛇の列を作ってイライラしながら待つのがデフォルトだった。 なので、この落語で描かれる駅員とワガママ客の攻防には、誰もがあったあったと心中…

砂漠を舞台にしたスゴイ落語

2.砂漠のバー止まり木(三遊亭白鳥) 新作・創作落語の作り手は無意識に日本を舞台に設定してしまうのだが、これは舞台を砂漠にすることで成功している。童謡『月の沙漠』で日本中の小学生に砂漠とラクダのイメージを刷り込んでくれた加藤まさをと佐々木すぐる…

新作・創作落語紹介してきます

コロナで去年からオンライン落語会が数多く開催されるようになり、新作・創作落語に手軽に触れられるようになりました。今日から面白い新作、創作落語についてちょっとずつブログを書いていきたいと思います(英語化は面倒なんで気が向いたらします) 1 ストレ…