Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

落語で解決!悩み相談①

今年は新作落語紹介ではなく、色々な悩みが解決できる噺を紹介していこうと思います。


其の一 就職の悩みを落語で解決


質問 楽な仕事をしたいけどお金も欲しい!就職活動どうしたらいいでしょう


処方落語 「動物園」


あらすじ 仕事をせずにぶらぶらしている甥っ子をみかねた伯父が職を世話しようとするが、どんな仕事がいいか聞くとワガママばかり。朝寝坊できて体力つかわず残業もなしだが金払いのよい仕事なんてあるか!とキレかかるが、一件だけ条件に合った職があったのを思い出して紹介する。甥が行ってみるとそこは移動動物園だった。園長から虎の皮を被ってオリの中でブラブラするのが仕事と言いくるめられ早速始めるが…


結論 イイ就職先かどうかは人それぞれです。まずワガママと思われても譲れない条件を言いましょう。ピッタリな職場は必ずあります。ただ、条件通りだからって油断は禁物です。いきなりライオンと対戦させられてもいいよう、度胸だけは日頃からつけておきましょう。


参考 「動物園」は色々な噺家が演じてますが、英語版なら立川志の春のがオススメ。外資系なら面談の前に上司に聞かせておけばアナタの希望が叶いやすくなる…かもしれません。


誰でも笑える英語落語: Rakugo in English https://www.amazon.co.jp/dp/4103350318/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_SXE18YWY417M8MWD4GDW

年老いた親のパワフルな道楽に振り回される子供達の悲哀

90.親父の演歌(桂三枝/現・桂文枝)


人生100年時代になって、余生は短いどころか下手をすると働いた年数より長く過ごすことになってしまった現代。それを反映してか、新作、創作落語にも老後や余生をテーマにしたものが割と見られるようになった。この落語もその一つだ。

ストーリーは、老いた父親が様々な趣味に手を出し、その度に巻き込まれる子供たちが集まって対策を講じている。この親父が写真、尺八、陶芸と年寄りが手を出しそうな趣味に残らずハマる上、門付けをしたり、作った急須を送りつけたりともれなく家族に迷惑をかけるタイプの人。そんな親父が次にハマったのが歌手デビューで、有名演歌をパクった歌でCDを出そうとしているのを知った子供たちは、流石に洒落にならない、と何とか止めようとするが…というもの。

現実では、宗教にハマったり怪しい投資やロマンス詐欺に引っかかってすっからかんになったりと高齢者の余生の過ごし方はあまり笑えない結果を招く場合が割と多いが、この親父の趣味は自分の金を使ってパワフルにやりたいことをやっている感じで聞いてて楽しい(もちろん振り回される子供たちは大迷惑だろうが)。ラストも子供たちが口を揃えてケチな親父だという性格に見合ったサゲで、ああこういう老人いるよなぁとカラッと笑える落語だ。


オススメ度 ★★★★


CDあります

https://tower.jp/item/3016893/%E6%A1%82%E4%B8%89%E6%9E%9D%E3%81%AE%E7%AC%91%E5%AE%87%E5%AE%99-05-%E5%90%88%E6%A0%BC%E7%A5%88%E9%A1%98-%E8%A6%AA%E7%88%B6%E3%81%AE%E6%BC%94%E6%AD%8C

初恋の女の子と結婚する幸運に酔いきれない非モテ男の苦悩

89.新婚妄想曲(三遊亭白鳥)


女性より男性の方が初恋の相手を忘れがたいらしい。が大人になればなるほど初恋してた高校生の時のように純粋には振る舞えず、いらぬ勘ぐりなどをしてしまうのはありがちで、そんな不安をベースにしたドタバタ落語がこの噺。

ストーリーは、東京から田舎に戻ってきた高校時代のマドンナに色めき立つ中年独身の男どもだが、なぜか彼女は主人公にだけ積極的にアピールしてくる。とんとん拍子に結婚まで決まったものの、自分が選ばれた理由がさっぱり分からない上、彼女が東京でどんな仕事をしていたか教えてくれないので主人公はどんどん疑心暗鬼に陥っていき…というもの。

アニメネタや懐メロ等も絡めながらマドンナの過去が語られていくのがこの噺のメインだと思うのだが、正直その前段の、男同士でウダウダ悩み相談している会話がいかにも独身こじらせているなぁという感じで笑えた。男心の勉強になる落語…かもしれない。

オススメ度 ★★★★


CDあります

毎日新聞落語会 三遊亭白鳥2 https://www.amazon.co.jp/dp/B01M18PZS2/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_9AWY01JN1V6CYJ4EFQN0

年寄り扱いに意地でも抵抗する定年オジサンの落語

88.明日に架ける橋(柳家喬太郎)


定年というのは残酷な制度で昨日まで課長、部長として活躍していたサラリーマンでもばっさりとお役御免になってしまう。周囲も隠居扱いするが、平均寿命が80歳代まで延びた日本で定年イコール年寄りと納得できる者はそういないだろう。そんな定年オジサンの抵抗というか反抗?に焦点を当てた珍しい噺がこれだ。ちなみにタイトルはサイモン&ガーファンクルの名曲にちなんでると思われるが内容は全く関連していない。

ストーリーは、定年&還暦を祝われたお父さんが定番の赤いちゃんちゃんこを着るのを拒否して昔の同僚と飲みに行く途中、通りかかった川に白線流しよろしく思い入れのある背広を繋いで流すが、同じような定年同士が集まってきてちょっとした騒ぎになり…というもの。

ともすればお父さんたちの愚痴で終わりそうな内容だが、場面を家庭、川、会社シチュエーションで接客してくれる酒場と変えて変化をつけてるのはさすが。オチは若干ファンタジーっぽいが、上手くまとまった噺だと言える。

オススメ度 ★★★★


CDあります

SWAのCD 2007 - https://www.amazon.co.jp/dp/B003X03DBM/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_1D1QG0BB81139EQZ342F

運動会前に雨降れ!と願う小学生の気分になって笑える落語

87.空に願いを(春風亭昇太)


好きな女の子に出来もしない約束をしてしまう小学生男子は端から見たら微笑ましいが、本人は真剣なものだ。この噺は入院中の女の子のため、運動会で一等を約束してしまった足が遅い男の子が主人公。彼は悩んだ末に運動会を中止にする為雨乞いの秘訣を知るという祖父に泣きつくが…というのがストーリー。

祖父の雨乞い特訓がハチャメチャで爆笑ものだが、この訓練がちゃんとオチに結びついているのがスゴイ。音でなく見ないと分からないタイプの落語なため、是非DVD か落語会で楽しんでほしい。

オススメ度 ★★★★★


DVD あります

SWAのDVD https://www.amazon.co.jp/dp/B001UFGYPO/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_SH4931HEX6QTWK2ZNRQ8

昔気質の洋食屋を舞台に展開されるファンタジー?&人情?噺

86.結石移動症(柳家喬太郎)


初めての店に入った際、常連客と店主がやりとりしてると思わず聞き耳たててしまうことがあるが、そんな雰囲気が漂う落語だ。

ストーリーは、美味しくないと文句を言いつつ連日来る客に軽口をたたきながら洋食屋を長年営む店主、最近身体の具合が思わしくない。医者に行ったら結石移動症という難病と診断され悶々としていたところ、息子が婚約者を連れてくる。が、その婚約者は出前をよく取ってたソープの女の子だった…というもの。

下手するとダラダラ店で会話してるだけの噺になりそうなところ、結石が身体中を移動するという奇病と名医を絡めることで引き締めているのがいい。オチにハリーポッターを掛けてるのが若干ファンタジーっぽいと言えないこともないユニークな人情噺だ。

オススメ度 ★★★★


CDあります

喬太郎落語秘宝館2 https://www.amazon.co.jp/dp/B001HK0EH6/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_GMN24KRGA2BYNRK3C25J

発想点が違うと着地点も異なる良い見本の落語

85.全身日曜日(林家彦いち)


同じタイトルで全然別の話というのは小説の世界ではよく見るが、落語でというのは珍しい。No.84.で紹介した全身日曜日という噺はもともとこちらが先にできたのだが、落語家の着眼点は同じ"身体”でも発想が全然違うせいで全くかけ離れた面白さを持つ落語となっている。

ストーリーは、息子の野球の応援に行ってくれと懇願する奥さんに旦那さんは身体のあちこちが働いてるから日曜日は休ませなきゃ!と屁理屈を捏ねて抵抗する。呆れた奥さんは野球場に出発するが、途中で歩道橋から飛び降りようとする学生を見つけてしまい…というもの。旦那が苦し紛れに人差し指くんいつも左右を指してくれてありがとうとか、膝くん面白くもないのにいつも笑ってくれてありがとうと感謝してると言うのにムカっとしてる奥さんが、いざ飛び降りを止める際には旦那のセリフをパクって使い出すのが似た者夫婦という感じでおかしい。同タイトルの2落語を聴き比べしてみるのも楽しいかもしれない。

オススメ度 ★★★★


CDあります

彦いちばなし 〜林家彦いち落語集・創作編〜<br>全身日曜日/さいとう/彦いち短か噺 | ディスコグラフィ | 林家彦いち | 日本コロムビアオフィシャルサイト https://columbia.jp/artist-info/hikoichi/discography/COCJ-36581.html