Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

医者が余りまくった世界を描いた逆転落語

77.ダンシングドクター(桂三枝/現・桂文枝)

コロナ蔓延中の世界ではちょっと想像しにくいが、もし医者の数が増えすぎていたら?という発想からできたこの落語には笑いながらも色々と考えさせられる。

ストーリーは、医者が増えすぎて通常の病院勤務や開業医となるのが困難となったため、ドクターたちは様々な手段で営業をするようになり…というもの。病院に行けば担当ドクターが2人もつき前後から診察するありさまで、他にも屋台の診療所を開いたりバーやクラブに現れて注射をする医者も出る始末。基本的に医者は患者がいないとできない商売だが、需要と供給が逆転してしまうとかなりツライだろう。こんな逆転世界を客に想像させ笑わせることができる落語というシステムは本当にスゴイ。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

桂三枝大全集~創作落語125撰~第2集「にぎやか寿司」「ダンシングドクター」 https://www.amazon.co.jp/dp/B00005OO0T/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_SHFPMR0RV201AF1MKF2N

歴史物なのに遊び心満載で演じられる楽しい落語

76.滝口入道(春風亭柳昇)


落語には源平盛衰記など、数は少ないが歴史を題材にとったものがある。こういう歴史物の利点はいろいろあるが、何と言っても登場するキャラクターを客側が知っているため説明が不要なのがいい。ただ裏を返せば歴史的背景についても客は知識があるということなので、落語家が怪しい語りをしてしまうと見限られてしまうのが難しいところ。

この噺は平家物語&高山樗牛の小説に案を得て作られた噺と思うが、歴史の重みに引きずられることなく、軽やかに演じているのは流石だ。ストーリーは平家全盛時代、平清盛に桜の宴に招かれた若武者、斎藤滝口時頼が横笛という美しい娘に恋をしてしまい、毎日恋文を送るが返事をもらえず、思い余って出家してしまう…というもの。こういう噺は古語や長い人名が多くて現代では落語家から敬遠されてるのかもしれないが、客としては是非聴きたいジャンルでもある。この噺も誰か引き継いでくれる落語家が出てくれると嬉しいのだが。

オススメ度 ★★★★


CDあります

春風亭柳昇 落語名演集(3) https://www.amazon.co.jp/dp/B00BWUSHZ2/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_Z0DB5Q3SC0VGY55DNG

拡散手段が多すぎる現代らしい爆笑落語

75.みんな知っている。(林家彦いち)


江戸時代は一斉周知のやり方は高札か瓦版ぐらいしかなかったので、古典落語の中で個人情報拡散手段として出てくるのは口コミくらい。だが今はどんな人でも何の情報でも広められる恐ろしい時代。これはそんな時代に相応しい落語かもしれない。

ストーリーは、部屋を掃除していた母親にエロ本を見つけられてしまった高校生の息子、父親に説教されてそれでおしまいと思ってたら、我を失った母親がメール、緊急連絡網、回覧板、通報とあらゆる手段を使ってエロ本見つけたことを拡散したと知り…というもの。

町内のおばさんにも警官にも名前を知られエロ本のこと話され、やっと学校に逃げ込んだらHRの議題として取り上げられ…と散々な目にあう息子くん。トラブルの連続に笑いながらも、自分がここまでされたら…と若干の恐怖を感じさせる上手い噺だ。

オススメ度 ★★★★

犯罪者に優しいご近所に悩む露出狂の葛藤が笑える

74.露出さん(春風亭百栄)


古典落語にはよく犯罪者が出てくるが大抵は泥棒だ。有名どころだと、夏泥、転宅などだが同じ犯罪でも物を盗まない、人の体を傷つけない露出狂を主人公にしたのがこの噺の上手いところだと思う。

長年毎夕6時半に物陰から出てきてコートを広げてるが、誰もキャーっと叫ばなくなったと悩む露出狂。元気がなくなった彼を心配してお巡りさんまで訪ねてくる始末で…というのがストーリー。

露出パフォーマンスをしてもご近所からいつもご苦労様です、と挨拶されるわ、女学生から部活の報告されるはという地域に馴染みまくりの露出狂というシチュエーションが面白い。地域のマスコット扱いになってると知り、もう廃業しようかとしょげる露出狂は思わず慰めたくなるほどだ。

オススメ度 ★★★★


CDあります

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高齢化アイドルの面白トラブル落語

73.アイドルは早起き(桂三枝/現・桂文枝)


長寿化は以前なら考えたこともないトラブルをもたらすが、それを笑いにしたのがこの落語だ。ストーリーは高齢者向けの平均年齢80歳超えアイドルグループを企画した芸能事務所だが、考えもしなかったトラブルの数々に直面し…というもの。

年寄りは早起き早寝なので全国ツアーも夜公演できないから午前開催でとか、階段上り下りがきついから楽屋はステージ横にして医者看護師待機させる、弁当も食べたの忘れて騒ぐから一人三個配る等々今までのアイドルと180度異なる対応を迫られる事務所スタッフの右往左往ぶりが笑える。

オチはちょっと弱いが、時代を先取りした噺かもしれない。

オススメ度 ★★★★


CDあります

桂三枝の笑宇宙07 https://www.amazon.co.jp/dp/B00BBQYLPC/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_SSKXGY4V5Q98DBSC5TEF

スポーツ恋愛物のイメージをぶち壊す落語

72.青畳の女(林家彦いち)


オリンピックも多分開催されそうなので、関連した落語を探してみた。ストーリーはオリンピック選考の柔道大会に出場する女の子、勝つ気満々だったのに好きな男の子が応援に来ると知って浮足立ってしまう。女の子らしく見られたいと思うあまり、試合中に不審な行動を取り続けた結果一回戦負けしてしまい…というもの。

柔道で活躍する姿を好きな人に見せたいけど見られたくないという、いじらしい乙女心が落語になると笑いの連続になるのが不思議だ。方向が全く違うが、どこかYAWARA!へのオマージュが感じられる秀作である。

オススメ度 ★★★★★


DVDあります

彦いち噺DVD 創~SOU~ https://www.amazon.co.jp/dp/B000R4MH00/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_7VYRQ9Q0YQMW87AA5AA7

病院に幇間というミスマッチが笑わせる落語

71.カラダの幇間(柳家喬太郎)


今日本にプロの幇間は2、3人しかいないと聞いたことがある。なのに古典落語では割と出番があるのが幇間だ。幇間が今の日本で活躍できる場があるとしたら?と考えてみたとき、この噺にあるように病院で患者を励ますというのはかなり当たりだと思う。

ストーリーは、ある病院でホスピタル幇間を務めている一八が、ドクターに頼まれて昏睡状態の少女の身体に入って目覚めない原因を探るというSFチックなもの。元凶を追い出す為、幇間の技を使いまくって相手の機嫌をとる一八に笑える。本当にこんな幇間が病院に常勤していてくれるといいのにと思わせる噺だ。


DVDあります

SWAのDVD https://www.amazon.co.jp/dp/B001UFGYPO/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_JKFVJ46GEHC4G6TRS9ZH