Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

アナタの足の裏が不満を漏らしたらどうする?という仰天落語

84.全身日曜日(三遊亭白鳥)


新作・創作落語は割と突飛な設定が多いが、人体の各部分が愚痴る設定の噺はその最たるものだろう。

ストーリーは、ある男がスナックでママに最近目がかすむ、耳が遠くなったやる気も出ないと愚痴ってると客の坊さんから説教される。身体の各器官にも人格があるのだから喜びや休みを与えなければならない、と言われた男は目にビールを注いだり耳にタコぶつを突っ込んだりと斜め上の行動に出る。男が眠った後、耳や目、頭が今日の体験について会話し始めるのだが、まさかの足の裏が参戦してきて…というもの。

いつも踏みつけられてるので身体の上の方に行きたい!と言う足の裏の願いを叶える方法について、ちゃんとマクラで伏線貼っているところがスゴイ。演じるのに非常に体力というか柔軟性が要りそうな噺だが、落語会等でかかったら是非自分の体に起きたら…と想像しながら楽しんでほしい。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

SWAのCD 2011 https://www.amazon.co.jp/dp/B005OCSUN8/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_TY0RHBPVZCCWG3PNKS1C

鉄道ミステリっぽい火曜サスペンス風落語

83.恨みの碓氷峠(柳家小ゑん)


西村京太郎の鉄道トリックミステリっぽい仕立てだが、さすがプロの作った落語で随所に笑いが散りばめられ、客が予備知識皆無でも気楽に楽しめるようになっている。

ストーリーは、碓氷峠で機関車の刺青をした女性の死体が発見され、勤務先の鉄道カフェに聞き込みに行ったところ怪しい常連客が見つかる。が彼は浅草演芸ホールにいたとのアリバイを主張しはじめ…というもの。鉄道カフェで切符を渡され車内販売の売り子から飲み物を買うはめになり戸惑う刑事たちの姿や、寄席のいい加減さをヒントにアリバイ崩しをするのが笑える。ミステリや鉄道好きなら一度聴いてみてほしい。

オススメ度 ★★★★


CDあります

柳家小ゑん千一夜VOL.4 https://a.r10.to/hy7ldF

駅名言いたてを取り入れた鉄道創作落語

82.切符(桂梅團治)


古典落語では金明竹、大工調べなどがあるが、新作・創作落語ではあまりみない駅名列挙の言いたてが入った噺。

ストーリーは、友人の新築祝いで飲みすぎてしまった男が行先を忘れ、みどりの窓口の駅員に思い出す手助けをしてと泣きつく。仕方なく駅員は大阪からの駅名を並べたてるが酔っ払った男が茶々を入れたりして進まず…というもの。酔っ払い男と駅員の会話が古典落語蜘蛛駕籠(住吉駕籠)に若干似てるが、大阪近辺の駅に親しみがある人には聴いてて楽しめる噺だ。寄席で掛けられた時は是非言いたてに注目してほしい。

オススメ度 ★★★★


本あります

鉄道落語 - 東西の噺家4人によるニューウェーブ宣言 (交通新聞社新書052) https://www.amazon.co.jp/dp/4330352133/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_P9DEF2FN1NG062XS5EHA

ちょっとモラハラ入ってる?レトロな新作落語

81.かんしゃく(柳家小三治)


新作・創作落語はたいてい現代または江戸時代に設定されているが、これは大正っほいレトロさが漂う珍しい新作。

ストーリーは、邸宅に何人もの使用人と書生をかかえている社長、癇癪持ちで、帰宅のたびに玄関が片付いてない、蜘蛛の巣がはらわれてない等の不始末を見つけては怒鳴り散らす。たまりかねた奥様、実家に帰るが父親に諭されて開眼、次の日から手落ちのないように使用人と書生を切り回し、社長が帰ってきたときには小言のタネがないようにしてみたところ…というもの。

演じてる最中ほぼ怒鳴りっぱなしという落語家の声量が試されるような噺だが、怒鳴るのを聴いててもこっけいで笑えるのが不思議。内容は今だとモラハラっぽいが、時代背景をちゃんと冒頭で説明しているのが上手いしオチもスッキリ。もっと色々な噺家にやってもらいたい秀作だ。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

落語名人会(39)~柳家小三治15 提灯屋/かんしゃく https://www.amazon.co.jp/dp/B00005G6XT/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_0AV0BMK34Y59BZZ01KYB

掛け捨ての落語を擬人化した新作・創作落語家の苦労が滲み出る怪作

80.ネタの部屋(春風亭昇太)


古典と違い、新作・創作落語は掛け捨て、つまり客前でやってみて受けなかったらもう演じることなくお蔵入りにすることが多い。時事ネタを盛り込んだ噺などは旬が過ぎると表に出せなくなるのもやむなしと思うが、もしそういった噺たちに人格があったら?という発想から考え出された落語。

ストーリーは、ある日道に迷った落語家がたどり着いた家には自分が今まで作ったものの仕舞い込んでいた噺たちが暮らしてた、というだけだが、例えば「Jリーグの哀しみ」とかはタイトルだけで何故演じなくなったか分かるような気がするのが面白い。噺たちがまたいつか掛けてくれないか、とけなげに待ちつつ、人気のある噺「愛犬チャッピー」に嫉妬する様には笑わずにはいられない。古典派には分からない新作・創作落語派のつらさが沁みる怪作だ。

オススメ度 ★★★★


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春風亭昇太2 26周年記念落語会-オレまつり https://www.amazon.co.jp/dp/B001TMEEMS/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_AW8JNAZQ9FVCH9224K5X

鉄道オタクの家庭生活に爆笑

79.鉄の男(柳家小ゑん)


鉄道オタクは鉄ちゃん等と呼ばれるようになり割と市民権を得てきたが、家庭内ではまた話が違う。理解ある家族でないとどうなる?というのを落語にしたのがこの噺。主人公は鉄道大好きなお父さん。息子にお土産で鉄道模型を買ってきてゴジラの方がいいと泣かれたり、奥さんにリビングのソファーをグリーン車座席にしたことや玄関に踏切付けて怒られたりしてる。最近結婚した鉄道オタク仲間に相談があると呼び出され…というのがストーリーだが大部分鉄道マニアならすぐわかるエピソードで占められてるのが特徴。お父さんが熱弁するほと冷めていく息子と奥さんの会話もおかしいし、新婚なのに奥さんに実家に帰られてしまった鉄道オタク仲間のやらかしエピソードも実際ありそうで笑える。鉄道に全く詳しくなくても爆笑ものの秀作だ。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

柳家小ゑん千一夜VOL.5<BR>https://a.r10.to/hD9IeQ

狂言✖️落語の野心的な実験落語

78.狂言長屋(立川志の輔)


古典、新作・創作落語と他業種のコラボは近ごろよく見られる。例をあげるとオーケストラ、ミュージカルなど。しかしこの噺は狂言とのコラボというかなりの冒険的な作品だ。

ストーリーは、身投げしようとした狂言師の男を助けた長屋の連中。死にたい訳を聞くと、新作狂言が期限まで出来そうにないためだと言うので、皆でない知恵を絞って話を考えだそうとするが…というもの。

この噺の肝は、長屋連中の言い合いに閃いた身投げ男が書き上げた狂言が実際に演じられること。劇中劇という感じで、落語と落語の間に狂言を挟むやり方になっている。

ただこういうコラボはどうしてもスムーズに話を運ぶのが難しい。一人で何役も演じてる最中に他人が踏み込んでくる形になるので流れが止まる。客としてはついて行くのが難しいが、印象に残る噺といえるだろう。

オススメ度 ★★★★


DVDあります

志の輔らくごin+PARCO+2006-2012「狂言長屋」<BR>https://a.r10.to/hymplV