Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

『プロフェッショナル 仕事の流儀 笑いの奥に、人生がある 噺家 柳家小三治の仕事』を見て思うこと

とりあえず小三治は本当に聞きたかった質問に答えてもらえず気の毒だったなぁ。


小三治『昔は200からの噺を覚えてたが今は正直できるのは50かもっと少ない。どうやったら思い出せるのか』
茂木『繰り返しアウトプットの練習する事です』
脳科学の専門家ならもっと的確なアドバイスもらえると思ったんだろうに。小三治が多分本当に聞きたかったのは、どうやったら(若い頃にした努力と時間をかける事なしに)覚えた噺を思い通りにアウトプットできるか?という事じゃないだろうか。


まあこの手のドキュメンタリーで良質なインタビューがされることは少ない。アシスタントの女性も『面白いって何ですか』なんて聞いちゃって小三治に『わからない、だから探し続けてる』みたいに返されてたし。


名人と呼ばれる人は、多分野球で言うところの3割バッターなのだろう。どんな寄席の状態(雨や雪の平日は夜でもガラガラ)や客層でも思わず笑わせる、という落語家が名人なんだと思う。
ついでに上手と名人を試しに定義してみた。


[上手(な落語家)]
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* 口調に淀みなく声が通る
* 噺は大体面白いが得意でない噺は笑わせる方に力を入れがち
* 笑って帰ったあと、何の噺だったか思い出せないことがある(笑った事自体は覚えてる)


[名人]
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* 声が通らない事もあるが客の方が聞き耳をたてる
* 笑わせるというより自然と笑いがこぼれる感じ
* 噺や噺に出てくる登場人物の印象が後々まで残る

 

かなり昔に寄席で見た小三治の『鰻の幇間』を今でも覚えてる。最初はつまんない噺だなぁと思ってたのに、最後の方では呼吸困難になるほど笑った。腹の皮がよじれるって正にこの事だと思った。
持病と人間国宝という重しを背負いながら自分の落語を探し続ける小三治はかなりカッコいいと思う。