Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

いかにもなオジサンキャラクターの存在感がスゴいリーマン落語

31.夜の慣用句(柳家喬太郎)


上司が部下を連れて飲みに行く、というよくあるシチュエーションだが、部下に対して座右の銘は?としつこく聞くウザイおじさんキャラを主役にしたのがこの噺の肝だ。

居酒屋で飲みつつ部下に座右の銘を聞くが、棚からぼたもち等適当なことを言われた上司は腹を立てて説教のループを繰り返す。もてあました部下たちは機嫌を取るためにキャバクラに連れて行くが…というのがストーリー。部下やキャバクラの女の子たちに絡む様がオジサンあるあるで爆笑させられる。オチもダジャレだがちゃんとタイトルと掛けているのも好感が持てる。かなり短い噺なのが難点だがカジュアルに楽しめる好作といえよう。

オススメ度 ★★★★


CDあります

喬太郎落語秘宝館5 https://www.amazon.co.jp/dp/B002ISFCVE/ref=cm_sw_r_cp_api_glc_i_Y6CX4KX9A489ZTTEF5GH

 

''掛け言葉”を使い倒す秀逸な落語

30.掛け声指南(林家彦いち)


ボクシングのセコンドという珍しい職業が出てくるあまり類のない設定。タイからセコンドになりに来た青年、しかし日本語の壁が厚くガンバレ!しか言えない為、もう国に帰れと言われてしまう。なんとか猶予をもらい、アドバイスに従って街で人々を観察しボクシングで使えるような日本語がないかと探すものの…というのがストーリー。応援したい!というパッションはあるものの、言葉遣いを間違えて失敗ばかりする姿に笑わずにはいられない。が、ジムに帰ってセコンドをやってみると、その失言がすべてひっくり返ってプロフェッショナルなアドバイスになると言う展開がすごい!

通常の古典落語では、例えば与太郎が誰かの真似をして失敗するところで笑っておしまいとなるが、この噺では逆の構成になっている。笑点でお馴染みの、〜とかけて〜ととく、そのココロは?という掛詞遊びがあるが、その回答にはたいてい二つの意味がかかっている。この掛詞の手法を最初からオチに至るまで徹底的に取り入れているのがこの噺の素晴らしいところだ。ボクシングを知らなくても笑える秀作である。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

https://www.hmv.co.jp/artist_SWA-林家彦いち-三遊亭白鳥-春風亭昇太-柳家喬太郎_000000000413869/item_SWAのCD-2006-夏休み_3877604


DVDもあります

SWAのDVD https://www.amazon.co.jp/dp/B001UFGYPO/ref=cm_sw_r_cp_api_glc_i_3TFB99CE8GYT0W5NXJ2S

路面電車をキーにしたツンデレ恋物語落語

29.都電物語(古今亭駒治)


かつて東京の中央でも路面電車(都電)が走っていた。その事実をもとに作られているが、実は主役は毎朝駆け込みで乗車するOLと運転手で、都電は要所要所で2人の関係を進める役回りをしている。噺の中でこのOLは都電の運転の仕方に一家言あるらしく、運転手のコーナリングの仕方に文句をつけたりする。が、その陰に好意が伺えるツンデレ彼女の言動に押されっぱなしの運転手のリアクションに笑える。ラストも恋物語らしいオチになっていて、鉄道に興味がなくても笑えてほんわかとした気持ちになれる好作だ。

オススメ度 ★★★★


本出てます

https://honto.jp/netstore/pd-book_25510696.html

前振りなしで気楽に楽しめる、新作落語のお手本

28.ぐつぐつ(柳家小ゑん)


あらすじがかなり知られている古典落語と異なり、新作・創作落語はほぼ初見の客を相手にしなければならない。よって、どれだけ客に違和感を感じさせることなく噺に引き込めるかが重要なポイントになる。

この噺は、屋台のおでんたちが自分たちの人気不人気を割と自虐的に鍋の中で語り合うというもの。各おでんの具が個性豊かに描かれているため、聴いていてイメージしやすく非常に分かりやすい。グツグツという掛け声と相まって、子供から大人まで気楽に楽しめる落語になっている。なお、演じる側でもこの噺は人気らしく、他の噺家が演じてたり三遊亭円丈が「新ぐつぐつ」を作ってかけたりしている。

オススメ度 ★★★★


CDあります

柳家小ゑん千一夜Vol.8「ぐつぐつ・牡丹灯籠42.195km」

https://a.r10.to/hVVTYm

先生と生徒の校内攻防を描いた傑作落語

27.仁義なき校争(桂三枝/現・桂文枝)


先生と生徒という関係は落語にしやすいのかもしれない。この噺でも、ある学校で生徒の反抗・授業妨害に悩まされる先生たちが一念発起しヤクザ風に振る舞って威圧しようとする様が描かれているが、多分制作時の関係で学校環境が若干古い。でもその古さを差し引いても相当面白く引き込まれる落語になっている。生徒の脅迫に怯えて教室にも入れない先生の姿や、対抗するため教員に組長と呼ばせる校長の滑稽な悲壮さが大阪弁で語られるのでさらに面白く感じられる。オチもいかにも先生が言うようなセリフになっていて文句なしだ。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

爆笑落語(一) https://www.amazon.co.jp/dp/B00005EO2W/ref=cm_sw_r_cp_api_i_6GBQ46VT8X0TW8GVZP08


DVDもあります

花王名人劇場 桂三枝たったひとり会 1 [DVD] https://www.amazon.co.jp/dp/B006VUBDUO/ref=cm_sw_r_cp_api_i_R33RCPXR86MVEVV0CB37?_encoding=UTF8&psc=1

 

まさかの金庫を主役にした人情泥棒噺

26.明日に向かって開け(三遊亭白鳥)


落語の中ではいろいろなものが擬人化されるが、多分金庫は初めてではないだろうか? ストーリーは銀行に忍び込んだ泥棒が、かつて世話人として雇われていた老人を使って金庫開けようとするが…というもの。泥棒と老人の立場が途中で逆転したり、金庫を開ける開けないの会話が落語の芝浜風になっていたりと笑いどころが盛りだくさんの噺となっている。ラストで金庫自身が転がってる脱出するという身体を張った仕草も一見の価値ありだ。

オススメ度 ★★★★★

 

CDあります

https://tower.jp/item/2755300/SWAのCD-2006--夏休み-

猫好きが作った猫好きのための落語

25.バイオレンス・スコ(春風亭百栄)


趣味から新作・創作落語を作る噺家は多いが、この噺もその一つ。ストーリーは野良猫なのに何故かスコティッシュ・フォールドとアメリカン・カールとで縄張りが分かれてる地域で餌場のエサを巡って諍いが起こるが…というもの。キャラットや銀のスプーンなどというキャットフード名も出てくるので猫に詳しくない人には若干ついて行けないが、それでも客を置き去りにして趣味に走ることなく話を運ぶ技量はさすがだ。野良猫にエサをやりにくるOLの描写や餌の種類に興奮する様など、猫好きならではの観察も散りばめられていて、万人受けはしないかもしれないが楽しめる噺になっている。

オススメ度 ★★★

 

CDあります

春風亭百栄1 https://www.amazon.co.jp/dp/B009YZRY4W/ref=cm_sw_r_cp_api_i_APJR9VE858H9WT62JZ19