Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

予想裏切る展開の連続が爆笑を呼ぶ怪作

35.諜報員メアリー(柳家喬太郎)


通常、落語の観客はどういう展開になるか予想しながら聴いている。マクラや出てくる登場人物の会話なんかで、滑稽話なのか人情話か、仕事場の話か家庭内の話か等々を判断しているわけだ。逆に言うと、こういう予想がしにくい噺をされると、客はついていくのに精一杯で笑うのが難しくなる。が、この落語は軽々とそのハードルを越えて、展開がクルクルと変わってもその都度笑える見事な構成になっている。

ストーリーは、居酒屋で酒を過ごして店を追い出され、仕方なく始発を待つ学生2人の会話から始まる。駅への途中、謎の金魚売りならぬロブスター売りが倒れているところに出くわし、慌てて助けているところに突然謎の女が現れ諜報員メアリーと名乗り、日本経済をムチャクチャにする計画を自らバラし、偶然通りかかったソープ嬢を人質にして他に漏らしたら容赦しないと脅す…書いていて思ったが、これがもしテレビドラマなら何場面切り替えすることになるんだろうか。こういう噺ができるところが落語が持っているパワーの凄さで、噺家に何役も演じ分ける技量と会話でシチュエーションをイメージさせる力量さえあれば、客を飽きさせることなく最後まで惹きつけられる。

何噺に区分すべきか困る怪作だが、面白さは間違いなしだ。

オススメ度 ★★★★★


CDあります

喬太郎落語秘宝館3 https://www.amazon.co.jp/dp/B001HK0EL2/ref=cm_sw_r_cp_api_glc_i_H7534SXZF900Z9SSDEN3