Rakugolover’s blog

落語について色々語ります

落語

年寄り扱いに意地でも抵抗する定年オジサンの落語

88.明日に架ける橋(柳家喬太郎) 定年というのは残酷な制度で昨日まで課長、部長として活躍していたサラリーマンでもばっさりとお役御免になってしまう。周囲も隠居扱いするが、平均寿命が80歳代まで延びた日本で定年イコール年寄りと納得できる者はそういな…

運動会前に雨降れ!と願う小学生の気分になって笑える落語

87.空に願いを(春風亭昇太) 好きな女の子に出来もしない約束をしてしまう小学生男子は端から見たら微笑ましいが、本人は真剣なものだ。この噺は入院中の女の子のため、運動会で一等を約束してしまった足が遅い男の子が主人公。彼は悩んだ末に運動会を中止に…

昔気質の洋食屋を舞台に展開されるファンタジー?&人情?噺

86.結石移動症(柳家喬太郎) 初めての店に入った際、常連客と店主がやりとりしてると思わず聞き耳たててしまうことがあるが、そんな雰囲気が漂う落語だ。 ストーリーは、美味しくないと文句を言いつつ連日来る客に軽口をたたきながら洋食屋を長年営む店主、最…

発想点が違うと着地点も異なる良い見本の落語

85.全身日曜日(林家彦いち) 同じタイトルで全然別の話というのは小説の世界ではよく見るが、落語でというのは珍しい。No.84.で紹介した全身日曜日という噺はもともとこちらが先にできたのだが、落語家の着眼点は同じ"身体”でも発想が全然違うせいで全くかけ…

アナタの足の裏が不満を漏らしたらどうする?という仰天落語

84.全身日曜日(三遊亭白鳥) 新作・創作落語は割と突飛な設定が多いが、人体の各部分が愚痴る設定の噺はその最たるものだろう。 ストーリーは、ある男がスナックでママに最近目がかすむ、耳が遠くなったやる気も出ないと愚痴ってると客の坊さんから説教される…

鉄道ミステリっぽい火曜サスペンス風落語

83.恨みの碓氷峠(柳家小ゑん) 西村京太郎の鉄道トリックミステリっぽい仕立てだが、さすがプロの作った落語で随所に笑いが散りばめられ、客が予備知識皆無でも気楽に楽しめるようになっている。 ストーリーは、碓氷峠で機関車の刺青をした女性の死体が発見さ…

駅名言いたてを取り入れた鉄道創作落語

82.切符(桂梅團治) 古典落語では金明竹、大工調べなどがあるが、新作・創作落語ではあまりみない駅名列挙の言いたてが入った噺。 ストーリーは、友人の新築祝いで飲みすぎてしまった男が行先を忘れ、みどりの窓口の駅員に思い出す手助けをしてと泣きつく。仕…

ちょっとモラハラ入ってる?レトロな新作落語

81.かんしゃく(柳家小三治) 新作・創作落語はたいてい現代または江戸時代に設定されているが、これは大正っほいレトロさが漂う珍しい新作。 ストーリーは、邸宅に何人もの使用人と書生をかかえている社長、癇癪持ちで、帰宅のたびに玄関が片付いてない、蜘蛛…

掛け捨ての落語を擬人化した新作・創作落語家の苦労が滲み出る怪作

80.ネタの部屋(春風亭昇太) 古典と違い、新作・創作落語は掛け捨て、つまり客前でやってみて受けなかったらもう演じることなくお蔵入りにすることが多い。時事ネタを盛り込んだ噺などは旬が過ぎると表に出せなくなるのもやむなしと思うが、もしそういった噺…

鉄道オタクの家庭生活に爆笑

79.鉄の男(柳家小ゑん) 鉄道オタクは鉄ちゃん等と呼ばれるようになり割と市民権を得てきたが、家庭内ではまた話が違う。理解ある家族でないとどうなる?というのを落語にしたのがこの噺。主人公は鉄道大好きなお父さん。息子にお土産で鉄道模型を買ってきて…

狂言✖️落語の野心的な実験落語

78.狂言長屋(立川志の輔) 古典、新作・創作落語と他業種のコラボは近ごろよく見られる。例をあげるとオーケストラ、ミュージカルなど。しかしこの噺は狂言とのコラボというかなりの冒険的な作品だ。 ストーリーは、身投げしようとした狂言師の男を助けた長屋…

医者が余りまくった世界を描いた逆転落語

77.ダンシングドクター(桂三枝/現・桂文枝) コロナ蔓延中の世界ではちょっと想像しにくいが、もし医者の数が増えすぎていたら?という発想からできたこの落語には笑いながらも色々と考えさせられる。 ストーリーは、医者が増えすぎて通常の病院勤務や開業医と…

歴史物なのに遊び心満載で演じられる楽しい落語

76.滝口入道(春風亭柳昇) 落語には源平盛衰記など、数は少ないが歴史を題材にとったものがある。こういう歴史物の利点はいろいろあるが、何と言っても登場するキャラクターを客側が知っているため説明が不要なのがいい。ただ裏を返せば歴史的背景についても…

拡散手段が多すぎる現代らしい爆笑落語

75.みんな知っている。(林家彦いち) 江戸時代は一斉周知のやり方は高札か瓦版ぐらいしかなかったので、古典落語の中で個人情報拡散手段として出てくるのは口コミくらい。だが今はどんな人でも何の情報でも広められる恐ろしい時代。これはそんな時代に相応し…

犯罪者に優しいご近所に悩む露出狂の葛藤が笑える

74.露出さん(春風亭百栄) 古典落語にはよく犯罪者が出てくるが大抵は泥棒だ。有名どころだと、夏泥、転宅などだが同じ犯罪でも物を盗まない、人の体を傷つけない露出狂を主人公にしたのがこの噺の上手いところだと思う。 長年毎夕6時半に物陰から出てきてコ…

高齢化アイドルの面白トラブル落語

73.アイドルは早起き(桂三枝/現・桂文枝) 長寿化は以前なら考えたこともないトラブルをもたらすが、それを笑いにしたのがこの落語だ。ストーリーは高齢者向けの平均年齢80歳超えアイドルグループを企画した芸能事務所だが、考えもしなかったトラブルの数々に…

スポーツ恋愛物のイメージをぶち壊す落語

72.青畳の女(林家彦いち) オリンピックも多分開催されそうなので、関連した落語を探してみた。ストーリーはオリンピック選考の柔道大会に出場する女の子、勝つ気満々だったのに好きな男の子が応援に来ると知って浮足立ってしまう。女の子らしく見られたいと…

病院に幇間というミスマッチが笑わせる落語

71.カラダの幇間(柳家喬太郎) 今日本にプロの幇間は2、3人しかいないと聞いたことがある。なのに古典落語では割と出番があるのが幇間だ。幇間が今の日本で活躍できる場があるとしたら?と考えてみたとき、この噺にあるように病院で患者を励ますというのはか…

ペットが口きけたら言いそうなクレームの連続が笑わせる

70.愛犬チャッピー(春風亭昇太) もはや犬やネコに服を着せてるくらいでは驚かなくなったが、冬にダウンジャケット姿の犬が散歩してるのを見た時はさすがに驚いた。そんな犬の気持ちになって作った様な落語が本作だ。 噺自体は短いが、柴犬なのに室内飼いで、…

ワインも擬人化?熟成が楽しみな創作落語

69.過去のないワイン(桂三四郎) 豆腐もおでんも擬人化されて落語になってるので、ドリンクもひょっとして落語になっているのでは?と探したらありました。 ストーリーは、とあるワインセラーで目覚めたビン、ラベルもバーコードも剥がされて自分の名が分から…

ハズレると痛い温泉宿での悲喜劇落語

68.温泉旅館望洋楼(桂三枝/現・桂文枝) 温泉好きな人なら分かると思うが、温泉自体は何の問題なくても泊まるところが大ハズレということが結構ある。この噺を聴いてるとそういう思い出がよみがえってきて情けない気分になる。 ストーリーは温泉通をきどる男…

死体の扱いが超軽いシュールな落語

67.さいとう(林家彦いち) プロでも何でこんなこと書いちゃったんだろうと思うような作品をつくってしまうことがあるらしく、この噺もその一つ。死体を巡って右往左往するのは映画「ハリーの災難」に似ているが、死の理由も死体の来歴も分からないのでかなり…

メチャクチャな恋愛アドバイスが功を奏す爆笑落語

66.恋するヘビ女(三遊亭白鳥) 大抵の恋愛アドバイスは自らの経験に基づいてるがゆえにある程度偏りがあるものだ。この噺では、おばさんが好きな女の子に告白しようか悩む小学生(!)の甥にアドバイスするのだが、寂しがってる相手につけこめとか自分の夢を語れ…

みんなと違うと落ち着かない日本人気質を描いた落語

65.夫婦に乾杯(春風亭昇太) よそはよそ、うちはうち!と思っても、自分の家庭が他と違うと言われると気になってしまうもの。特に日本人にはその傾向が強いと言われてる。その不安な気持ちをベースにしたコミカルな噺だ。 会社の商品ネーミング会議で頭を捻る…

バスを待つイライラと夫婦の愚痴をうまーく落語にした秀作

64.バス・ストップ(立川志の輔) 東京だと都営バスがあと何分で来るのかは停留所に電光表示されてたりスマホでチェックしたりできるが、市や町の巡回バスだと時刻表なしで数十分間隔で運転されていることがある。待っている時の、あと何分でバスが来るのか分…

同棲カップルの別れ話で暴かれる秘密が面白い落語

63.すみれ荘二〇一号(柳家喬太郎) 人は何でこんなこと隠すの?ということでも往々にして家族や恋人の目を欺くように振る舞ってしまうことがある。この噺に出てくる同棲カップルもお互い隠していることがあるのだが、その暴き方が細かいところに気がつく人が…

昔話✖️新作落語の可能性を追求した野心作

62.臼親父(林家彦いち) 個人的に増えてほしいと思っているのが昔話をベースにした落語なのだが、実はそんなにないのが残念。小咄には結構残っているのだが…。有名どころだと桃太郎ぐらい?鶴の恩返しも浦島太郎も小咄に使われてるのは聴いたことがあるが、ス…

バツイチ時代の結婚式風景を落語にしたら

61.またも華々しき華燭の典(桂三枝/現・桂文枝) バツイチ、バツニと言う言葉が浸透して久しいが、そういう時代の結婚式はどうなる?という疑問を落語に上手く落とし込んでいる。いつも思うが、会話で情景を描く落語という手法に向いているイベントとそうでな…

新作➕ハメモノ➕伝記の挑戦的落語

60.越路吹雪物語(春風亭小朝) 大歌手の人生を落語にするだけでも相当な才が要るが、その曲も取り入れるとなるとかなりの構成力を必要とすると思う。この落語は昭和55年に亡くなったシャンソン歌手・越路吹雪の人生を落語化したものだが、彼女を尊敬して丁寧…

政治家ネタを盛り込んだ三題噺落語

59.幽霊角栄(三遊亭白鳥) 政治家はエピソードの宝庫なのでマクラの時事ネタにはよく使われてる反面、落選や不祥事等で入れ替わりが激しいので本題にするのには向かない。がこの噺は幽霊にして本人出演させるという思い切った演出にしたおかげで面白エピソー…